2013年5月21日火曜日

「クリムト・黄金の騎士をめぐる物語」

 広大な園地が広がり、新緑も、爽やかな風も味わいながら、行ってまいりました。県立美術館は何度か拝見したことがありましたが、この「宇都宮美術館」は私、初めての訪問でした。
 宇都宮市の北部の誠に広い敷地の中に、実に落ち着いた雰囲気を感じさせてくれる美術館がありました。クリムト生誕150年記念(厳密には151年)として、彼の主要な作品が沢山展示されておりました。十九世紀末の西欧に於ける、特に、オーストリア・ウイーンにて、どちらかといえば華麗にして優雅な、雅と甘美を感じさせてくれる作品群でございました。美術工芸品なども陳列されておりまして、世紀末ウイーンの諸相がよくわかります。
 それにしてもこのパンフレット上にあります「黄金の騎士」には、当時の旧弊なる美術界をぬけだした「ウイーン分離派」の中心人物としてのクリムトの、強固な意志と感性が感じられます。守旧派に敢然と立ち向かう彼自身を描いたとも言われますが、謎の部分も秘めた作品でもあります。よくご覧いただくと分かりますが、左下、隅に黄金の蛇が描かれています。毒蛇でしょうか、しかし馬も馬上の騎士も敢然としているさまがよく感じられます。《人生は戦いなり》の副題がついております。
 江戸時代前期の「花唐草模様」や鈴木其一の《秋草図》、蒔絵硯箱なども展示されており、いわゆるジャポニズムの影響の大きさを実感させられます。
 実は以前に紹介しました「丸谷先生の『無地のネクタイ』」にクリムトが再登場しております。『クリムトの絵について考えている最中なので、アール・ヌーボウには関心があるのだ。』としまして『装飾性を賞賛し、建築と絵画の結び付きを重んじた(中略)。これはクリムト、および彼の属していた分離派の大きな特色であった』。そして多くの天井絵や、装飾性豊かな壁画を残しました。
 それにしても物議を大いにかもした「ウイーン大学大講堂の天井画(哲学、医学、法学)」(実物は焼けて消失してます)の原寸大写真の迫力と、その幻想的な表現には圧倒されます。

 財団法人としての宇都宮美術館の立地条件や、環境にも驚きました。林間を吹き抜けるマイナスイオンを浴びつつ、駐車場までの散策もおすすめコースとして記しておきます。ただし館内のフレンチは今ひとつというか、企画展に合わせたとかいうランチの写真と実物の違いに少し落胆致しましたことも、これからのためにと思い正直に書き残しておきます。

 先週末は、「とちぎ蔵の街美術館」での正面入口前にて「竹工芸展」に併せて美術館様側からの依頼による出張販売を行ってまいりました。青竹筒入り水ようかんをメインに、ポップや販促物を作りまして、お客様をお待ち申し上げました。結構大変な作業でございました。ただしどうも、昨今の観光客の方たちはあまりお金をお使いにはならないようでして、どちらかというと、かのこ庵をご存知の方が、お買い求め下さいました。つまり、いささか思惑が外れた、ということになりますか。商売の難しさを、この歳で又ひとつ教えられました。日曜日は昼から私が事務局をしておりますある会の集まりが、お昼から有りまして、出たり入ったりの忙しさだけはたっぷりの週末でございました。

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