2013年5月12日日曜日

「憂鬱なセレナーデ」チャイコフスキー

 19世紀末の話が続きます。
 現在、少くとも一日に二度は、チャイコフスキーの「バイオリン協奏曲」「弦楽セレナーデ」等が店内で4個のスピーカーから流れております。結構なボリュームで。
 まず10人の内、気づくのは1~2名様ほどでしょうか。
 しかし昨日のお客様は「この曲のタイトルご存知ですか」と、きました。「はあ、一応。好きで流しておりますので」とお答えしましたが、「『憂鬱なセレナーデ』とは変な曲名ね」ときました。「バイオリン協奏曲」の次に流れるよう編集しておりましたのですが、「喜怒哀楽を表現した曲名が多いのにねー。でもいい曲を流しているんですね」と仰っていただきました。「少し休んで聞かせてもらうわ」として15分ほど居りました。

 お菓子をお褒めいただくのが、勿論一番嬉しいのですが、次に店内の雰囲気や、展示してあります書画などを褒められます事、そして流れております、クラシックに気づかれます事、これも又、心中でニコニコしております。「タンホイザー」や、「ロミオとジュリエット」等も編集して流しております。

 「好きだねー」とか「和菓子のお店にクラシックはあいますね」とお客様からの反応もございます。でも「ボリューム少し落とせよ」とのお客様も少なからずおることも事実です。いいんです。この歳になったら如何に自分が気持ちよく仕事ができるかを、一番に考える。そう決めたのです、数年前から。
 

 前回はクリムトでございました。世紀末に一際光り輝いた著名人がたくさんおります。西洋の各地で。
 ヨーロッパの歴史の中で、これほど文化、文明、芸術の花開いた時期はそうはないと言えます。どうも20世紀に入ると何かきな臭さがいつも漂っている感じです。
 ワグナーが1813年にドイツのザクセン州ライプチヒで生まれますが、バッハやメンデルスゾーンなどを輩出した地でもあります。
 チャイコフスキーはロシアで1840年に、クリムトは、1862年にオーストリアはウイーンで生まれています。

 ところで昨日の下野新聞の記事の中に、「時代設定を変えたワグナーオペラ『ナチ虐殺描き』公演中止に」とございました。
 ワグナーは今月22日に生誕200年を迎えますが、ドイツでの「タンホイザー」公演が時代設定をナチス時代に置き換えて、ホロコースト(ユダヤ人の大量虐殺)の場面が出てくるそうでして、これは中止も当然かもしれません。いつまでもドイツ人に限らず、ヒットラーは忌むべき存在でしょうが、その彼が彼のプロパガンダに利用したことは史実です。ワグナー本人は1883年にイタリアはベネチアで亡くなっております。一時期ユダヤ人への誹謗中傷をしたこともありました。ヒットラーが彼の楽曲が気に入っていたこともあり利用された次第です。しかしワグナーは晩年に、自身のコンサートの指揮者にユダヤ人を選んでおります。 

 ただそれにしても、昨今の日本国にて、韓国人や、中国人、あるいは彼らが多く住む街で、彼らへの非難、中傷、罵詈雑言を投げつける人たちがいることが報道されています。政治家があてになる日が来ることもあるのかどうかわかりませんが、これらの問題解決の方策として、妥当な策とは言えません。心情はよく理解できますが。
 泉下のワグナーが困惑しているかどうかわかりませんが、時に迷惑に思っている方も、別な行動で示すことも考えるべきです。
 開高健先生が、ベトナム反戦を訴えるニューヨークタイムスへの広告を出したことは既にご紹介しました。少なくないアメリカ人が日本にもこのようなしっかりした知見と、行動力を持った人物がいることを再認識した、旨の記事が随分見られました。
 しかし、人権の確立されていない国に、何を言っても犬の遠吠えでしかないような気がします。残念なことですが。
 
 

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