2012年8月25日土曜日

「悠々として 急げ」 開高 健

 昨晩は、一旦はベッドに滑り込んだのですが、ひょいと、どうでもよき事柄を思い出しまして、暫くは扇風機の風を受けながらゴロリ、ゴロリしていました。しかし何んとも、一向に眠気が訪れず、遂に諦め、起き出しまして、以前に放映された、開高先生の「漂えど沈まず」のビデオを深夜、一人で繰り返して見ておりました。
 ウイスキーをば、なめつつ。
 58歳の、今で言うならこれからという、円熟期での生涯でしたが、独特のやや甲高い声で人生論を始めとして、その凝縮された言葉は、何度聴いても、はっとさせられます。 
 例えば「戦争に勝利者はいない」とか。
 「人間不信、イデオロギー不信。
 人間は変わらないけど、人間の
  言うことは変わる。その言うことの
 部分に対する不信の念が深いわ
 けよ。」
 

 1987年に「阿川佐和子」さんと対談していますが、その中で、
開高「テレビ以前のことだけど、わたしの友達で自殺したのがいる。ニュース映画撮っていて、トピックになるような極端なのばかり追っかけるから、そのうちおかしくなって、いっちゃった。」
阿川「はあ・・・。」
開高「でも君は心配しなくてもいいの。」
阿川「女は、ですか?」
開高「明治以後、女にも小説家や雑誌記者がたくさんでたわね。しかし、自殺したやつ、一人もいない。ご安心あれ。
 それに対して、男は一流に限って自殺する。俺なんかべんべんと生きているから、三流の作家ではないかと思うんだ。」
阿川「自殺したいと思われたこと、ありますか。」
開高「のべつ。」
阿川「のべつ?」
開高「うん」
阿川「でも、しない・・・。」
 (中略)
開高「女は自殺しない。」
阿川「女で自殺したというのは・・・。」
開高「男と一緒にやったのはいますよ。有島健郎が・・・・(中略)
 タフですぜ、尊敬しますわ。」
阿川「どうしてでしょうね、やっぱり男の人のほうが繊細なんでしょうか。」
開高「繊細というか、鋼(はがね)と同じで折れやすいのよ。
そして、折れたらもとに戻らない。(以下略)

 シリアで政府軍の銃撃により、山本美香さんという方が
亡くなりました。報道写真家や、医療ボランテア等に関わる女性が海外での活躍の中、尊い命を落とされることは残念の極みです。ただし、やはり危険地帯という地域が存在することも現実です。先程の自殺の話とは全く違う話となりますが、未だお若い女性がこのような形でお亡くなりになられては、ご両親はさぞや、お辛いでしょう。しばらくお顔も見てはおられなかったはずです。

 開高先生の話に戻ります。
 昔ありましたでしょう、「平凡パンチ」という週刊誌。
 そこに掲載された「240万円に賭ける開高健のアイデア」という文章です。
 「人殺しに反対の人、ベトナム戦争はいやだと思う人、
 日本人も巻きこまれちゃ困ると思う人、あの国のことは
 あの国の人にまかせるべきだ思う人は、フロ代の残りを
 送ってください。
 『ニューヨークタイムズ』に戦争反対の広告を出してみた   
 いと思います・・・(略)・・・
 アメリカ人に、じかに、オヘソに話しかけてみたいと思い 
 ます。
 政党、労組、組織、学校、属している人、属していない人
 なんでもいいから、、賛成なら送ってください。
 コーヒーのお釣りでも、フロ代の残りでもいいのです」
 
 
 大変な行動力を持った、まさに知識人でした。
 

 しかし、韓国のトップにいる方の言動は何でしょうか。
 訳の分からない中国の行動も、結局は今まであたらず、触らずできた日本の政治家の無思慮、無分別に突き当たります。戦をするのではなく、常時行われてきた交流の中で、その主張を常にしておくべきでした。今、この段階で騒いでも、手遅れではないかもしれませんが、野田さんにヒーローは無理です。かといって、過去、放置してきたといって差し支えないと思いますが、その方たちにも猛省を求めたい。
  別件ながら、関西の有名人にして、政治家の行動力は知識人と呼べる範疇のものでもないと、付け加えておきます。
 

 しかし残暑が厳しすぎます。
 午後の三時くらいまで、お店はというか通行人を見かけません。困ったことです。シリアや中、韓、露どころではないのですね、かのこ庵は。でも今日ご注文のありました、開眼供養のお餅や、お子様のお祝いの鳥の子餅の製造はかなりの汗をかかせていただきました。熱いものは、暑いのです。
 含羞草が又もよく咲き出しました。
 しつこいかもしれませんが、開高先生の名文というか名調子をもう一つ、ご紹介して終わりです。
 「男による、男のための、男の諺なのである。」と、いたしまして。

 『一時間、幸せになりたかったら
 酒を飲みなさい。

 三日間、幸せになりたかったら
 結婚しなさい。

 八日間、幸せになりたかったら
 豚を殺して食べなさい。

 永遠に幸せになりたかったら
 釣りを覚えなさい。』

 少し暑さを忘れさせてくれましたでしょうか。
 では又、近いうちに。
 次回は平安物です。 
 

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