2012年9月14日金曜日

「礼儀作法入門」山口瞳 著

 直木賞作家にして、お亡くなりになる直前までその直木賞の選考委員をなさっておりました、私が私淑する山口瞳先生ですが、先月末のご命日にて早いもので十七回忌となりました。
 お葬式はご遺言で「自宅内を少し片付けて・・・、ご近所には少し、ご迷惑をお掛けするかもしれないが・・・。」ということでした。しかし、実は誠に大変な人数の方がご弔問にお集まりくださいまして、ご自宅の周辺を幾重にも、列を作っておりましたこと、正直、圧巻でございました。ご葬儀に参列くださった方は、まさに各界の著名人でございまして、中には素敵な女優さん(先生の作品が映画化されたときに、ご出演なさった方たちです)もいらっしゃいましたが、普段はテレビでしか拝見できない方たちばかりでした。何故そんなことが分かるかといいますと、お身内に近い人物との立場として捉えられたようでして、受付や、内部との連絡役みたいな事をさせられておりました。畏れ多くも。
 ご逝去の一報と同時に直行し、枕頭でまだ生きておられるかのごとき先生のご尊顔を拝しておりました。お通夜のお清めの席には、これも大勢の作家の先生達が、静かにも秘めやかにお集まりでした。
 今でもその時の方たちのお名前を思い出します。

 先月末に書き込むつもりでしたが、開高健先生が先になってしまいました。暑さボケと言い訳しておきます。
 さて、数ある先生の作品の中から「礼儀作法入門」という著書をご紹介します。
 『礼儀作法の枢要を占めるのは、なんといっても冠婚葬祭である。(中略)大部分の人は婚礼と葬式から逃れることはできない。(中略)そこで、世間で行われているように、あまり突飛なことではなく、平凡に自然に、慣習に従って結婚式をあげ、葬式を出そうではないかということになってくる。この、平凡に自然に、慣習に従って、というのが礼儀作法の本体であると思われる。(略)小津安二郎さんは、藤本真澄(東宝社長)さんにむかって「人間は少しくらい品行は悪くてもよいが、品性は良くなければいけないよ」と、よく言われたそうだ。私は礼儀作法の要諦はここにあると思う。』
 『礼儀作法は、エチケットは、自然にその人間に湧いてでてくる。上から与えられたものであり、同時に、下から湧き出てくるものである。それは、その人の品性にかかわってくる。私はそんなふうに解釈する。』
 長くなりましたが、恥ずべきことの多い人生を過ごしてきてしまいました。
 
 今回、何故、この作品を取り上げたかには理由があります。
 仕事柄、人様よりも少しばかり早めに仕事場というか、お店に出てまいります。最初の仕事は、開店前の準備というか、軽く掃除をして(あとでパートさんがちゃんとやります)幟旗等を出して、お店の前のごみを掃き集めます。その際、いつも気になることがあります。必ず煙草の吸殻が2~3本落ちています。これを拾うのは別に苦ではないのですが、その煙草のフィルターのところまで燃え尽きた吸殻が必ず1~2本あることです。つまりもみ消さず、火がついたままで捨てている、という次第です。暗くなってから、車で走行中に前方の車から、ポイ捨ての火がついたままの煙草も時々見かけます。一瞬、火花が散りますからすぐにそれと分かるわけですが、なんとも悲しくなります。喫煙者の全てがとは言いませんが、単純なるマナーですら、我が国民はあまり気にはならなくなってしまったようです。
 『山本周五郎先生の灰皿というのがある。必ず灰皿をふたつ用意する。一方に水を張る。それで火を消して、もう一方の灰皿に捨てる。どこへ行っても、そうやっていた。
 たばこについての礼儀作法ということになると、一にも二にも「火災に注意」ということである。これが九十九パーセントである。』
  誠に持って当たり前のことなのですが、どうもですね。
 
 ヘビースモーカーであった先生も晩年は禁煙なさっていました。その数年後に私も禁煙し、現在に至りますが、時に宴会時などで、隣席の知人が吸いますと「一本よこせ」として分けてもらい、年に3本位吸いますか。そして、吸った煙を知人の顔に吹きかける、という困った人物になります。
 同著書の中で先生は書いておられますが、相手の同意なくして煙草は人前で吸うな、と。少なからず成人された方が煙草を吸っているものとしたら、最低限のマナーくらい日本たばこ産業(?)ではもっとPRに費用を割くべきです。
 或いは、どっちにしても肩身が狭い思いをして煙草をお吸いになっておられる方が多いはずです。まさに二十本入りの一箱を千円以上にでもしたら宜しいのでは、と申して今夜は、彼岸の先生を偲び、サントリーのウイスキーをロックでいただくことにしますか。先生は「ウイスキーを水で割って飲むなんて、病人でもあるまいし・・・」とおっしゃっておりましたので。「せめて炭酸で割りなさい」とも(つまり今や全盛の感のあるハイボールのことです)。
 
デジカメ不調につき、今回はノーフォトで失礼します。

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