2011年6月17日金曜日

「くず桜」と「わらび餅」

 梅雨冷えといえる半袖では寒さを感じるどんよりとした、そして、空気の重さを感じる今日です。
 でも22日は夏至となり、つまり夏だぞう!というわけで、夏ならではの涼しげな和菓子のご紹介を致します。「葛桜」「わらび餅」「水ようかん」等が代表されますが、意外とその素顔は知られていないようです。
 お客様から「わらび餅のわらび粉ってわらびの何処からつくられるの?」と訊ねられます。
 くず桜の葛も、わらび粉も共にその植物の地下茎を叩きほぐして洗い出し、精製されたでん粉を
さします。その粉を素材として作られるのが前述の和菓子です。水ようかんは寒天が主体となりますが、その風味と滑らかさを向上させるために、葛粉も加えられます。

 かのこ庵の葛粉は、奈良県宇陀市の森野・吉野葛本舗という、日本葛粉製造元祖,創業400年という宮内庁御用達の最高級葛粉を使用しています。しかし、葛粉という名前で出まわっている品には実はピンからキリでして、100g 300円近くする (業務用の価格です。実際にスーパー等で購入すると私がかなり驚く価格となっています。需給の関係でしょうか) 物から100円程度の品迄と色々です。ところで、吉野葛本舗さんは、昭和天皇がご見学に訪れていることでも知られていますが、元来は薬草園を管理することから始まっています。
 葛の生命力はとても強いのですが、その一方、花、茎、葉、根まで全て、其々に薬効がある事は昔から知られています。万葉集や枕草子にもその記述が出てきます。わらび粉も同じく、根の部分のでん粉質を精製して作られますが、寒晒しといって、寒中に作られます。春、夏の季節には、共に、地上に出ている部分に栄養が使われてしまいますが、寒い時期には地下茎に栄養が、蓄えられるという訳です。その寒中に採集されたでん粉質の部分を冷たい清澄な水をふんだんに使って
攪拌・溶解・沈殿・排水・加水攪拌・・・。これを7~8回繰り返して作られていきます。まだまだその先にも別な工程があるのですが、真っ白い氷砂糖に似た状態で、私どもの手に入ります。
 下の写真でお分かりいただけると思います。


 わらび餅粉は葛粉と同じ工程を経ますが、何しろ、純粋な蕨粉は極めて生産量が極端に少なく
生産者も限られており、とても高価な商品になっています。そこで通常和菓子店が使用するわらび粉は甘藷澱粉や、タピオカから採れた澱粉、葛粉を混合したものを使用しています。それでも、かなり高価な原材料となります。
 そして、わらび餅として商品化するには、かなりの労力が必要です。葛餅と違って、粘力があり、練り上げるのが大変なんです。うっかり手を抜くと直ぐに焦げ付きます。
 しかし、前にも書きましたが、この季節の商品は本当に手が掛かるのです。
 額に汗をかきながら精魂傾けて作られる、夏の涼味の裏話をさせていただきました。

 今回は純粋に和菓子の話でした。 

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